2024年12月02日号
令和6年犯罪収益移転危険度調査書を読み解く~暴力団とトクリュウの「過去・現在・未来」
トクリュウの本質である「匿名性」「流動性」の高さは、暴力団が「犯罪組織」化する過程で警察との対決によって先鋭化・洗練化したものであり、トクリュウの原型は暴力団にある。一般的に暴力団の表面的な衰退とトクリュウの台頭という二元的な捉え方がなされるが、両者は大きく見れば一体のものとして捉えてよい。暴力団は今後、「任侠団体」としての中核を小さく維持しようとしながら、金儲け第一主義の「犯罪組織」としての性格を強め、一般社会と周縁部分が溶け合う形で社会的に深く存在していくはずだ。そうした状況において、暴力団とトクリュウの一体性が今後さらに強まることが予想される。あらゆる犯罪に深く関わる暴力団とトクリュウだからこそ、その「過去・現在・未来」は、犯罪収益移転危険度調査書を注意深く読み解くことで見えてくる。(芳賀)
カスハラ対応のリスクを正しく認識せよ
東京都に続き、北海道や三重県桑名市でも、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)防止条例が成立した。桑名市の条例は、警告に従わない場合は氏名公表を行う建付けで一歩踏みこんだ内容になっている。このような流れを踏まえ、改めてカスハラへの対応について言及したい。例えば旅館業法5条では一定の要件の元にカスハラによる宿泊拒否を認めているが、当該要件を満たさないのに宿泊拒否をすれば業法違反になる。現場では要件を満たすように対応する必要がある。また、カスハラがクレーマー的行為と認知されたことで、対応時に「カスハラ」と言おうものなら却って泥沼化する。注意が必要なのは、最近はここが商機と、にわか専門家が増えていることだ。「生兵法は大けがの元」。真贋を見極めることがカスハラ対策の第一歩と改めて認識すべきだ。(西尾)
12月はハラスメント撲滅月間! 職場をギスギスさせる言動になっていないかという視点を
厚労省は毎年12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定めている。この機会に改めてハラスメントに対する社内体制の見直しを実施いただきたい。厚労省の調査では「ハラスメント行為をしたと感じたり、したと指摘された」人のうち、自身の行為がパワハラに当たると考えている人は35.9%であった。つまり、64%は無自覚ということになる。パワハラの指摘を受けたことがある方は、その立場に関わらず、自分の行為がインシビリティ(相手を傷つけようとする積極的な意思はないが、思いやりや配慮を欠いた無作法な言動)になっていないか振り返っていただきたい。たとえパワハラ認定を受けなかったとしても、インシビリティな言動があれば働きにくい職場になり、生産性の低下や離職につながる。パワハラか否かではなく、働きやすい職場であるかという視点が肝要だ。(加倉井)
PFAS調査は継続性と対象の拡大がカギ
全国の米軍基地や工場周辺で検出されている発癌性疑いのある有機フッ素化合物(PFAS)の水道水への影響について、環境省と国交省が全国調査の結果を公表した。その結果、2024年度では国の暫定目標値(1L当たり50µg)を超える事例はゼロだった。環境省では「各自治体の対策が進んだ」としているが、それ以前の調査では目標値超の事例が出ていたため、今後の継続調査の実施は不可欠だ。特に今回の調査では大規模水道事業に加え、「簡易水道」とほぼ井戸水を水源とする「専用水道」も調査対象となったが、それらの半分以上は集計途中とのことで発表分には含まれていない。検査に取り組んでいない事業者もあり、拙速な判断はできない。さらに国内暫定目標値は欧米に比べ基準が緩く、水道法上の測定義務もない。“飲み水”の問題だけに国民の健康が最優先である。(石原)
年末年始も引き続き災害に警戒が必要
気象庁の発表によると、噴火警戒レベル2の状態が続いている浅間山の火山性地震は11月25日82回、26日49回、27日67回、28日80回、19日15時までに50回(速報値)だった。火山性地震は今年4月中旬以降増加した状態が続いている。3月中旬から認められていた山体の西側での膨張を示すと考えられる傾斜変動は停滞しているものの、火山ガスの放出量は、23年3月以前に比べて多い状態が続いている。引き続き、山頂火口から概ね2kmの範囲に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるとのことで注意が必要だ。能登半島では11月の地震回数は200回以上。11月26日に発生した震度5弱の地震をきっかけに、石川県西方沖を震源とする地震が90回以上も発生しているという報道もある。あまり考えたくはないが災害の兆候は収まりそうにない。年末年始も引き続き警戒が必要だ。(大越)
子どもも大人も、「なぜダメなのか」を理解してほしい
休日の電車内にて。乗り込んだ親子が立ち止まったのは、ドア前のスペースだった。車内は空いており、ドア前は「今は」広く空いている。しかし2駅先は休日も乗降客でごった返す駅。危険を察知したのか、若い女性が席を譲り、母親と下の子は座れたが、父親と2~3歳の子どもはドア前に留まった。子どもは疲れ、ドアの端に張り付くように床へ座り込む。戸袋に引き込まれる危険な場所だが、父親は「電車の中で床に座り込んではいけないよ」と注意している。危険を知らない子どもはその場でしばらくゴネ続け、やがて立ち上がって空いた席へ。怪我がなく安心した一方、父親に危険性を伝えなかったことに不安と後悔が残る。混雑するドア前は、戸袋への引き込みや隙間への転落等、危険が多い。大人も子どもも「なぜダメか」を理解し、自分の身を守ってほしい。(吉原)
SNSとの付き合い方を見直してみては?
読売新聞によると、オーストラリア議会は、SNSを介した子供のいじめや性犯罪、有害な投稿の閲覧を防ぐため、16歳未満のSNS利用を禁じる法案を賛成多数で可決した。世代論の第一人者ジーン・トゥウェンジ教授によると、Z世代は、それ以前に生まれたミレニアル世代と比べて、不安症・うつ病の罹患率、自殺率がはるかに高い事実を発見し、その背景の1つとして2007年にiPhoneが世に出てからのSNSの急成長を指摘していた。Appleの創業者スティーブ・ジョブズは「うちでは、子供たちがデジタル機器を使う時間を制限している」と述べていた。SNSによる脳への影響については様々な研究がされている。日本では、こども家庭庁を中心に議論が進んでいる。SNSを一律禁止すべきなのか、リテラシーを向上して上手く活用するべきなのか、SNSとの付き合い方を見直す良い機会だと思う。(安藤(未))
▼読売新聞オンライン『オーストラリア、16歳未満のSNS禁止法案成立へ…X・インスタ・TikTokなど対象』(2024/11/28 21:25)
▼こども家庭庁「インターネットの利用を巡る青少年の保護の在り方に関するワーキンググループの開催について」(2024/11/25)