30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

危機感を共有して特殊詐欺被害を防ぎたい

有識者や業界団体幹部などでつくる大阪府の「特殊詐欺対策審議会」は、高齢者が携帯電話で通話しながらATMを操作して詐欺被害に遭うのを防ぐため、銀行などの事業者に対し、対策を義務付ける条例改正が必要とする答申案を公表した。2025年2月の府議会に「大阪府安全なまちづくり条例」の改正案を提出する方針で、成立すれば全国初となる。提言内容は被害実態に対する危機感を背景に極めて踏み込んだ内容だ。「配慮すべき内容も踏まえた上で、現行条例に盛り込み、事業者や府民に対して義務を課すとともに、府が改正条例の周知を徹底し、継続的に広報・啓発を強力に推進することで、特殊詐欺被害を抑止することに一定の効果があるとの結論に至った」とする被害の防止に向けた「意欲」「志」は大変素晴らしく、同様の取組みが全国に拡がることを期待したい。(芳賀)

▼大阪府警察 第5回大阪府特殊詐欺対策審議会資料

▼更なる特殊詐欺被害防止対策の検討について(答申)

目が離せない韓国の政情

韓国の戒厳令は驚愕ではあったが、さもありなんとの印象もある。世界中で分断が進む中、韓国ほど亀裂の深い社会もない。それは保守対リベラルという基本的な対立構図であり、実際政権交代も頻繁になされた。それ以上に前大統領の多くが逮捕されている。保守派は日韓関係を重視し、リベラル派は対北政策に融和的だ。トランプ氏が金正恩と会談した時もリベラル政権だった。今後、トランプはウクライナ紛争の停止とともに朝鮮半島の緊張緩和も進めたい。こうしたトランプの動きは自らの米大統領選や日本の兵庫知事選に見られた既存メディア対SNSの構図とは一線を画している。つまり、トランプ氏の対北朝鮮政策に関して既存メディアがどのようなスタンスを取るのか。筆者の韓国縁者は弾劾派と同規模の尹大統領支持のデモをメディアは一切黙殺しているそうだ。(石原)

政治献金の歪な現状を正せ!

自民党は年内成立を目指す政治資金規正法の再改正案に、企業・団体献金の禁止を盛り込まなかった。また同党の政治資金団体「国民政治協会」(国政協)への2023年分の企業・団体献金は24億円に上る。今回の選挙で自公が過半数を割った意味合いを真剣に捉えているとは思えない。そもそも政治の役割とは何か。国民の幸福の実現に他ならない。しかしながら、経済的困窮が増す中で、治安の悪化も襲いかかってきているのが現状だ。どの政党であるかに関わらず、二世三世議員の能力や資質、発想の限界は明らかだ。しかしそれは献金側にも言えることだ。自社のHPでCSRやSDGsを高らかに謳いながら、特定政党への献金を止めない、パーティー券を購入する。これらの一体どこが社会貢献なのか。コンプライアンスも含め、企業側の真剣かつ真摯なリスキリングが要請される。(石原)

年末年始に能登のお歳暮はいかが

石川県和倉温泉にある「加賀屋」は100年以上の歴史を持つ老舗旅館だ。能登半島地震が発生したときには利用客400人、従業員300人が館内におり、地震後はすぐに避難誘導を開始。誘導中に津波警報が発令されたため、4階にあったコンベンションホールに利用客を移動させるなど迅速で冷静な行動を行った。メディアへのインタビューでは「お客様を誘導するのは旅館を知り尽くした我々がプロとしてやるべき」とする。その後も中型バスに暖房をつけて年配の方や女性、子供を優先して暖を取らせるなど機転を利かせ、最終的には全ての利用客を無事に帰宅の途につかせた。そんな同旅館も地震被害には勝てず、再開は2026年になる予定だが、現在でもネットで自慢の料理のお歳暮などを受け付けている。年末年始に能登のおいしい料理を大切な人に届けるのはいかがだろうか。(大越)

▼「加賀屋のお歳暮」(オンラインショップ「加賀屋」)

簡潔で適切な回答を得るための「問合せ」の工夫

お役所等への問合せで、簡潔で適切な回答を得るために意識しているのは、状況を具体的に示して聞くことだ。いきなり「この解釈はこれで合っていますか?」と聞かれれば、相手は都合よく解釈されないよう慎重になり、状況による場合は全ての条件における可能性を考え、膨大な時間を費やすことになる。「通常ならこうするところ、こんなイレギュラーが発生したため、取り得る選択肢を検討している。もしこうした場合、ここをこう解釈してよいか?」のように、状況を具体的に示しつつ、どの判断・解釈を知りたいかを伝えれば、すぐに必要な答えにたどりつき、「その状況ならこんな方法も」と、新たな選択肢を得られることさえある。簡潔で明確な答えが欲しければ、詳しく具体的に聞くこと。聞く側の情報が簡素では、答える側は簡潔ではいられないのだから。(吉原)

民主主義国家では、国民が徳を積まなければならない

朝日新聞デジタルに、韓国で発生した非常戒厳令の問題を契機に、日本の民主主義について考えさせられる記事があった。2021年にアメリカで議事堂襲撃事件があったが、数年に1度の頻度で「今時、民主主義国家でこんなことが起こるのか」と驚かされる事態が発生している。そんな時にいつも私が思い出すのは、古代ギリシャの哲学者プラトンの『国家』だ。プラトンは「理想国家の国民は有徳な人間でなければならない」と考えていた。政治家を選んでいるのは国民で、政治家は国民の合わせ鏡なのだから、良い政治を求めるなら、国民が徳を積まなければならないのだろう。政治に限らず、他人に何かをやってもらうよりも、自分が行動した方が早くて確実だ。リーダーシップとは自分をリードすることから始めるものだ。私も自分が徳を積むための努力を続けたい。(安藤(未))

▼朝日新聞デジタル『もし非常戒厳が日本で起きたら 自問自答の夜「民主主義は簡単に…」』(2024/12/5 18:30)

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