30秒で読める危機管理コラム

危機管理のプロの観点から時事ニュースを考察しました。

トクリュウのエコシステムを破壊せよ~闇バイト緊急対策はトクリュウ対策でもある

新たに警察庁長官に就任した楠氏は、「トクリュウの資金獲得活動の実態を解明し、関係機関と連携して違法なビジネスモデルの解体に取り組みたい」と述べた。今、日本の体感治安の悪化を招いている要因としてトクリュウの存在感が増している。一方、2024年12月に決定された闇バイト緊急対策も着実に進展、この1か月だけでも、仮装身分捜査の導入以外にも、暗号通信ツール対策の国際連携、闇バイト募集投稿の「有害情報」への指定、SNS事業者の対応迅速化に向けた制度作り、AIを活用した投稿監視態勢の強化、求人サイト事業者対策、悪質ホストクラブやスカウトグループの摘発強化など、幅広い取組みが実行に移されている。何より、こうした闇バイト緊急対策がそのままトクリュウが構築したビジネスモデル(エコシステム)の解体につながる点にも注目したい。(芳賀)

本気の事前防災に向けて~防災庁設置準備アドバイザー会議開催

現内閣の目玉政策の1つである防災庁設置に向けた「防災庁設置準備アドバイザー会議」が、1月30日に開催された。会議では災害対応力の抜本的強化の方向性として「本気の事前防災~防災業務の企画立案機能の抜本的強化」と「災害事態対処、被災地の復旧・復興における司令塔機能の抜本的強化」の2つを掲げ、目的達成のために重点的に取り組む事項として「避難者生活環境・備蓄体制の抜本的改善」「官民連携のよる災害ボランティア育成、防災教育の充実」「情報連携・共有強化などの防災DX推進」の3つを挙げた。「今後想定される大規模災害」においては首都直下地震、南海トラフ地震に加え、日本海溝千島海周辺海溝地震と富士山噴火を選出した。新たな災害はBCP被災想定の対象として加えることを検討する必要があるだろう。今後の成り行きに注目したい。(大越)

法律やルールがもたらす思考停止

労働時間は1日8時間、36協定は月45時間・年360時間まで。諸々の例外はさておき、これらの時間数はいずれも上限であり、本来はこの範囲内で「自社の最適」を考え、ルールを策定すべきなのだが…いつの間にか、この時間内なら「問題ない」と思い込み、「最適」を考えることを忘れていないだろうか。息を止めて行うような精密作業、断続的で手待ち時間が生じる仕事、体を酷使する作業、自分でスケジュールを調整できる仕事等、職種によって労働のスタイルは様々。さらに健常な若者、病気や障害がある人、高齢者等、働く人も様々だ。どんな仕事、どんな人でも、法定の労働時間上限が「問題ない」わけではない。法律に時間を縛られて、自社の様々な人が、様々な職種で、健康に働き続けるための「最適」を考えることを忘れれば、労災はきっと起きる。(吉原)

フジテレビの問題だけでなく、政治の話題も忘れずに

フジテレビが1月27日に改めて経営陣による記者会見を行ったが、社長(当時)が中居正広氏と女性社員とのトラブルを把握しても、コンプライアンス推進部門に情報が共有されなかったなど、ガバナンスの機能不全の問題が明らかになった。今後は、第三者委員会の報告書が公表されるまでは、事態を静観しておくべきだろう。前回に引き続き本稿でもこの問題を取り上げた身としては「どの口が言うのか」と言われてしまうかもしれないが、中居正広氏やフジテレビの問題が報道で大きく取り上げられたことで、例えば、派閥のパーティー収入を政治資金収支報告書に少なく記載したなどとして政治資金規正法違反容疑で告発されていた旧安倍派の議員・元議員が不起訴処分になったことがかき消されてしまったようにも思う。そろそろ、政治の話題にも目を向けたい。(安藤(未))

▼朝日新聞『フジテレビ、露呈したガバナンス不全 親会社も遅れたリスクの把握』(2025/2/2 17:00)

▼日本経済新聞『政治資金問題、旧安倍派・松野氏ら約60人不起訴 東京地検』(2024/12/26 17:45)

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