2025年03月03日号
【もくじ】―――――――――――――――――――
犯罪インフラ対策における「教育・啓蒙」の重要性
生成AIを悪用したプログラムで「楽天モバイル」のシステムに不正接続し、通信回線を契約したとして中高生3人が、不正アクセス禁止法違反などの容疑で逮捕された。3人が運用していたプログラムは主に高校生が作成。約33億件ものIDやパスワードをSNSを通じて入手、「テレグラム」を通じたやりとり、楽天の契約者のものとみられる約22万件の認証情報を入手、不正契約した通信回線を売却して、計約750万円相当の暗号資産を得ていた。なお、その動機は功名心や小遣いほしさなど、至って幼稚なものだ。「本人確認が甘い楽天を狙った」とし、これだけの犯罪が中高生のみで行われ、機微情報や犯罪インフラがかくも容易に入手できる実態に驚かされる。犯罪インフラの無効化だけでは十分ではない。「闇バイト」同様、若者に対する教育・啓蒙の重要性が増している。(芳賀)
「業界団体共通カスハラ対応マニュアル」策定に向けた動き
2月17日、東京都のカスタマーハラスメント防止ガイドライン等検討会議(第3回)が開催され、議事録のほか会議資料が公開された。本会議では、都が推奨する各業界団体共通の手引きについて意見交換され、団体へのヒアリング結果では、回答者から「各自治体のカスハラ条例の内容が異なると、全国規模で展開する会員企業は、対応が困難になると思う」といった率直な意見も出たようで興味深い。また今回、「各団体共通マニュアル(案)業界マニュアル作成のための手引」も公開された。主な内容は、カスハラ対応のフロー図、顧客等の出入禁止、企業間取引でのカスハラ、事業者策定のマニュアルのもくじ例など、わかりやすく書かれている。4月1日の条例施行まであとわずか。ぜひ皆さまの会社で一度、公開資料を確認し対策漏れのチェックをお願いしたい。(宮本)
▼東京都 カスタマーハラスメント防止ガイドライン等検討会議(第3回)
▼資料3 各団体共通マニュアル(案)(業界マニュアル作成のための手引)
大船渡市、平成以降国内最大規模の山林火災
岩手県大船渡市で2月26日に発生した山林火災。3月3日午前6時現在で焼失した面積はおよそ2100ヘクタールに拡大し、平成以降国内最大規模の山林火災となってしまった。火災は未だに鎮静する気配はなく、逆に集落の方向に延焼が拡大しているという。市は13地区のおよそ4596人に避難指示を発出。これまで住宅など少なくとも84棟が被害にあっており、1人が犠牲になった。大船渡市は、東日本大震災でも津波で甚大な被害を被った地域だ。今回もやっと復興した住宅が被害にあっているケースもあるとのことで、言葉にならない。まずは一刻もはやく火災が鎮静化することを願う。現地ではSNS等により火災原因などについて様々なデマも飛び交っているそうだ。投稿内容によっては消火活動や救命活動に支障をきたす場合もある。情報の発信にはくれぐれも注意したい。(大越)
「犯罪はダメ!」を常識にするか、便利さを諦めるか
自宅のトイレのドアを開閉するたびにどこかが当たる。蝶番が緩んだのかと、あちこちネジを締めたが直らない。困って放置していたら、ある日急に直っている!家族がネットで調べ、直し方の動画を見つけたとのこと。あぁ、なんと平和なネット利用!インターネットは困ったときに役立つ便利なツールだ。筆者にはオンラインゲームで交流を深めた人と結婚した友人がいる。こちらも、なんと平和なラブストーリー!同じ趣味の人同士が出会い、物理的な距離を越えて会話や交流を楽しめるのが、オンラインの醍醐味だろう。便利さや楽しさを求めて発展させたツールが、使う人の心ひとつで悪事にも活用できてしまう。便利さを諦め「禁止」を増やすのか、「犯罪なんてダメに決まっている!」と言える「人」を増やすのか。どちらが大事か、どちらが容易か?悩ましい。(吉原)
日本流のAI規制の始まり
「AI関連技術の研究開発・活用推進法案」が閣議決定された。人権侵害、犯罪への悪用等の生成AIがもたらすリスクへの対応としては、悪質な事案が発生した場合、国が調査し、その結果に基づいて事業者への指導や助言、国民への情報提供を行う予定だ。国が事業者名を公表する場合がある。さらに、事業者には、この国の調査等に協力する責務が規定される。そして、適正な研究開発・活用、国際競争力の向上のため、すべての閣僚からなる本部を設置し、基本計画を策定する予定だ。政府は、今国会で法案の成立を目指す方針だ。すでにAIの規制を行っている欧州連合(EU)では、違反した事業者への罰則があるのだが、日本ではAIの民間投資が遅れているため、イノベーションの促進とのバランスをとり、罰則は見送られた。日本流のAI規制の動きを今後も注視したい。(安藤(未))
▼首相官邸「令和7年2月28日(金)定例閣議案件」(2025/2/28)
▼日本経済新聞『悪質事業者は公表、AI新法を閣議決定 開発推進めざす』(2025/2/28 8:37 、10:02更新)